献身
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献身

 「その顔。ようやく自分の置かれてる立場が分かったみたいだね。そうだよ君は―――……」  朔が勝ち誇った顔で、俺に何やら話し掛けている。  でも俺は自分の思考を纏めるのに精一杯で、殆ど内容なんて聞いていなかった。  父さん達が朔を虐待していた?  信じたくない。あんなに優しかった父さん達が……。  でも、朔と初めて会った時、いつも優しかった父さんが朔に対して高圧的だった事を思い出す。  そして、容赦なく暴力を振るっていた。  父さんは三十一歳。朔は二十二歳。  丁度、九歳程年が離れている。  虐待を父さんがしていなくても、知っていた可能性は大いにあった。  ばあちゃん――つまり朔の母親でもあるわけだけど、はあんなにも朔を恐れていた。  朔と過ごすうちに思い出さなくなっていたそれらが、まざまざと俺の頭に蘇る。  「朔さん……」  朔の言葉を遮って、呟く。  それはひどく掠れていて、何とも頼りない声だったけど、朔には確かに届いたらしい。  「何?今更やめたりなん――…」  「朔さんは、昔、父さん達に虐待されていたの?」  朔の言葉をまたも遮って、喉から押し出すみたいに質問を投げかけた。  俺の質問に、朔は動じなかった。