序章
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序章

 何事も多面的な視点で捉えなくては、その本質を知ることは出来ない。  俺がこの心臓を移植することを悩んでいたときもそうだ。  朔が示してくれた考え方がなければ、俺は心臓移植の本質を知ることはなかっただろう。  だから、家族もそうだったってだけ、俺から見た父さん、そして祖父母は俺を愛して、献身的に支えてくれるいい人達だった。  でも、朔に対しては残虐な一面を見せていた。  ただそれだけ。  俺を愛してくれたことの感謝と、朔に虐待をしていた事への怒りは別々に考えなくてはいけない。  だって朔に虐待をしていたからといって、俺にしてくれた事は損なわれたりしないんだから。  でも、駄目だ。  割り切って考えるべきだと思うのに、俺の頭はそんなに単純に、機械的には出来ていないから。  だからこんなにも、父さん達への怒りが収まらないんだろう。  『ドライアイかも………』  あの話し合いの後、朔は自分が何故泣いているか分からないとでも言うように、こてんと首を傾げて言った。  自分が傷ついているという自覚もないであろう、その様子に俺の心は、きりきりと締め付けられた。  朔は結局、俺の愛を信じてはくれなかった。