136人が本棚に入れています
本棚に追加
困りますよねと、世間話みたいな軽さで佐野が笑う。花御は予想していたより酷いそれに、何も言えなくなった。
ただ、自分のせいだと責める気持ちだけが湧き上がってくる。
「──、」
『言っておきますけど、花御さんのせいじゃないですからね。それだけは、言わないでください』
「っ、……」
『今言いかけたでしょ』
喉に絡まった言葉が出るタイミングを失い、胸へ戻ることも出来ず、深いため息とともに消えていく。
先手を打った佐野の得意げな笑い声を聞きながら、それでも内心で謝った花御は、でも、と新たに浮かんだ疑問に小首を傾げた。
「じゃあ、今はどこにいるの?」
『……、どこだと思います?』
車の走る音が抜ける。
あまり気付かれたくないような、それでいて期待するような佐野の声音に、花御は口を閉ざして視線を下げた。
最初のコメントを投稿しよう!