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「……えっと、じゃあ……?」
未だ困惑する花御の手からお釣りを受け取り、青年が歯を見せて笑う。
「今度、履歴書持ってきます。いくら俺が尚の友達だからって、面接なしで選んでくれとか言いたいわけじゃないので」
「……はぁ……」
「ケーキ、じゃなくてプリンか。ありがとうございました。改めてお電話します。それじゃあ」
「ありがとう、ございました……」
夏の日差しと台風が一挙に押し寄せたような、目まぐるしさ。
花御は夏の太陽より眩しく、元気な笑顔と鈍いドアベルの音を残して去って行った背を追うように、暫くの間、呆然とそこに立っていた。
後日。約束通りに履歴書を持ってやって来た青年──佐野 洸大が、正式にスタッフとして雇われることが決まった。
3週間ぶりに広告を剥がしたカウンターは、ほんの僅かに日焼けの跡を残し、新しいスタッフに色めくお客様を穏やかに出迎えていた。
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