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浮かれていた。ドラマで見るように、恋人との写真を飾るようなことがあるかもしれない、なんて。同性であることも忘れ、ただ、名のつく関係であったことに安心していたのだと思う。
振り返ってみれば、綺麗に飾る思い出の1つさえ、見つけられないというのに。
「……捨てないと、いい加減」
零れ落ちた言葉が、ずしりと重く肩にのしかかる。中身のない、形ばかりの思い出に縋ってきた花御にとってそれは、指先が震えるほど難しいことだった。
手を離すだけのそれが、出来ない。
「……っ、……」
焦る気持ちとは裏腹に、手は縋るように写真立てを強く握り込んでしまう。
このままでは埒があかないと、花御がゆっくり、息を深く吸うと同時──。
「っ、あ……!」
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