セピア色の硝子片

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 反省の意を込めて腕を引いた花御に、茂木がほっとしたように口元を緩めたのもつかの間。 「かよさーん」  タイミングというものは、悪い時には悉く悪いらしい。  苦い顔で声の方を振り向いた茂木は、飼い主を待つ子犬のように眉を下げた佐野に小さく息を吐き出した。花御が苦笑を伴って、下ろした腕を上げなおす。 「僕がしておくから、行ってあげて」 「……すみません」  結局 茂木は、紅の残るカップと溶けたアイスが泳ぐ皿を、花御に預けざるを得なかった。受け取る瞬間の彼女の口惜しそうな表情が、花御の頬を緩ませる。 「……さて、と」  しっかり者の姉に甘える弟のように、茂木について回る佐野から視線を外した花御は、穏やかな時間を背に厨房へと身を翻した。
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