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時間にしてみれば、5分も経っていない。
「俺しますよ」
店内の音楽が微かに聞こえてくる厨房に響いた朗らかな声に、泡のついた手で袖を捲ろうとしていた花御の手が止まる。
「佐野くん」
「歌依さんに聞いて。俺がやりますよ」
早くも少し日に焼けた腕を晒すように袖をたくし上げながら、佐野がきょとんとする花御に笑みを向ける。
茂木とのやり取りを思い出した花御は、一瞬の逡巡ののちにスポンジから手を離した。
「……じゃあ、お願いしようかな」
「はい」
任せてくれというように笑顔を咲かせた佐野が、手を洗う花御を待ってスポンジを手に取る。再び時間が出来た花御は、店内が穏やかであることを確認して、厨房のスツールに腰を下ろした。
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