セピア色の硝子片

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 幼さを残しながらも落ち着いた仕草で言葉を交わしていた佐野が、言葉通りの驚いた様子で目を瞬かせる。  花御は、乾燥機に並ぶ洗い終えた食器類に視線を向けることで、佐野に対する少しの罪悪感を誤魔化すことにした。 「ん、いや。人懐こくて喋るのも上手みたいだし、なんとなく、モテそうだなぁと思って」 「えぇ、いやいや。モテませんよ。人懐こいのは、まぁそうですけど、これも多分、弟気質がなせる技です。学校でも俺、犬っぽいって言われるくらいですから」 「犬かぁ。確かにそれはまぁ……」  つい数分前に茂木を頼って眉を下げていた佐野の姿を思い出し、花御が納得したとばかりに言葉を濁す。  洗い物を終えて濡れた手をタオルで拭きながら、佐野は 「ほら」  と、酷く不満そうに口を尖らせた。それがまた子犬が拗ねているように見えて、なんだかおかしい。  花御はくつくつと声を出さずに笑い、でも、と小首を傾げた。
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