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──香乃くんの、友人じゃなかった……?
自信のあった記憶力を疑うほど意外なそれに呆然とする花御へ、青年の不思議がる視線が刺さる。
詮索したいわけではないが、自分の中にある差を埋めたくてそわそわしてしまう花御に、青年はようやく、ハッと動揺を表情に乗せた。
「あ、あの、違いますよ? 俺の子って意味じゃなくて! えっと兄ちゃんの子だから……姪っ子、姪っ子です! 3歳の女の子で、お姫様に憧れてて……すいません。変な言い方しちゃった……」
息継ぎを忘れたように言葉を連ねた彼が、気恥ずかしそうに耳の先を赤くして俯く。花御はその年相応の幼さを感じる仕草に、得心と安堵が混ざったような息を吐いた。
どうやら、記憶力が低下していたわけではないらしい。
「可愛らしいですね、お姫様に憧れるなんて」
安心した花御の声が、分かりやすく弾む。青年もほっとしたように口角を上げ、ショーケースに並ぶ小さく愛らしいケーキへと目を向けた。
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