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翌日
空に白みがかかってきた頃に結愛が目を覚まし、曇り空で少し冷えていたので、簡単にスープと朝食を作り、その間にアルも目を覚ましたので2人で朝食を済ませて、演習が終わる時間までのんびり過ごしていた。
結愛「雨でも降りそうな天気ねー」
アル「そうだね。昨日と比べて風も冷たいし、急な雨もありえるよね」
結愛「雨は嫌だなー」
アル「僕は雨が好き」
結愛「えぇー。ジメッとしてて嫌じゃない?足音とか臭いも掻き消されて、気配でしか敵を探れなくなるし」
アル「それは多分、結愛の独特な感覚だと思うよ?普通の人はジメッとしてて嫌なだけだと思う」
結愛「じゃあそんな雨を好きって言うアルも感覚が独特じゃない?ていうか何で雨が好きなの?」
アル「僕さ、属性無しって言われてたじゃん?それが凄く嫌で、いつも皆にそれを言われる事で凄く悩んでた」
アルが落ち込んだような表情で話し出すと、結愛は真剣な表情になってアルの話を聴き始める。
結愛「ぅん」
アル「それで気分が落ち込んで、雨が降ると嫌な事とか、嫌な気持ちになった事、悩んでる事とか、色んな事が雨と一緒に流れるような気がして、少しだけ気分が落ち着くし、無心になれる。だから僕は雨が好き」
結愛「そう。やっぱりアルは優しいわね」
アル「え?」
結愛「無属性だって言われて、それで嫌な気持ちになっても、誰かに八つ当たりとかしないし、1人で抱え込んで悩んで、その気持ちを雨と一緒に流して、誰にも迷惑とかかけないで解決しようとするなんて、凄く優しいと思う。私だったら嫌いな奴の人形でも作ってボコボコにしてストレス発散するもん」
アル「ハハハ…結愛らしいね(苦笑)」
結愛「でもねアル」
結愛のストレス発散方法を聞いて苦笑いしてるアルに、真剣な表情を見せる結愛に、アルの表情も真剣になって返事をする。
アル「なに?」
結愛「1人で抱え込んで悩んで、誰にも迷惑を掛けないのは、凄く辛いだろうし、その辛さに耐えられるアルを凄いと思う。でも、心配くらいはかけても良いんじゃないかな?私とは知り合ったばかりだし、心配される義理は無いかもしれない。けど、これまでアルをずっと育ててくれたご両親くらいには心配させてあげても良いと思う」
アル「親にはこれまで僕の事で沢山の迷惑をかけたのに、これ以上は迷惑かけられないよ」
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