~帰郷~

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遥がそう言った時、嵐はその言葉の意味に気付いて目付きを鋭くして遥に言葉を返す。 嵐「今から雅さんを巻き込めってか?」 遥「い、いや…その…仲間は多い方が良いと思って…」 嵐「確かに仲間は多い方が良い。けどそれは俺達と並んで戦えるレベルの奴の話だ。雅さんにそれだけの実力や覚悟があるかも分かんねぇのに、半端に鍛えた状態で戦わせて死ねっての?そんな事になるくらいなら生活に困らない程度に鍛えて、いざって時は俺達の後ろで守られてくれてる方がまだ良いね」 遥「そ、そうよね…ごめんなさい…」 雅「えーっと…急に重い感じだけど、どゆこと?」 嵐「さっき話した葵さんの件で、近いうちに大きな戦いがあるんです。それに雅さんも連れて行こうって言われたんすよ」 雅「それに伴う実力が俺には無いって事ね」 嵐「そうです。これから鍛えるにしても俺達自身の特訓もあるので、戦いに関して無知な人間を1から鍛えてる時間がありません」 雅「世界を救った英雄が鍛えてるって、葵はそんなに強いのか?」 嵐「正直言えばクソザコですよ。一緒に組んでる奴も少しは出来るみたいっすけどクソザコに変わりはないです」 雅「じゃあ何で鍛えてんの?」 嵐「その2人の周りが問題なんですよ。2人で国に、しかも俺と太陽の居るこの国に喧嘩を売るとは思えないし、何より他国が協力するとは思えないんです。そうなると何かしらで戦力を補ってくるって考えるのが妥当。その何かしらが全く分からないんで、備えあれば憂いなしって事で1から鍛え直してます」 雅「随分と慎重だな」 嵐「仲間を1人も失いたくないですから」 雅「…そっか。大切な仲間がお前にも出来たんだな」 嵐「はい」 雅「じゃあさ、1つだけ嵐坊に頼み事していいか?」 嵐「なんですか?」 雅「俺も一緒に戦うとは言わないから、せめてテメェの身を守れるくらいの事を教えてもらえねぇか?」 嵐「ぅーん…さっきも言いましたけど、戦闘に関して無知な人を1から鍛えてる時間が無いんです。太陽や他の奴が英雄と呼ばれる事になった時は訳ありで余裕があったんですけど、今回は本当の意味で世界が滅ぶ可能性もあるし、こっちの世界が滅ぶと、地球も滅ぶ事になるんです。俺達にどのくらいの時間が残されてるかも分からないし、何なら今この瞬間に葵さん達が戦争を仕掛けてきてもおかしくないんです」 遥「TRは使えないの?あそこなら時間の流れも変えられるし、中の1年を外の1秒とかに出来るでしょ?」 嵐「確かにその方法なら簡単に鍛えられる。けど、そこで時間を使うと俺の感覚が鈍る」 遥「嵐くんなら多少鈍ってもすぐ感覚を取り戻せるでしょ?」 嵐「感覚が鈍るってのは低レベルの戦闘に慣れるって事だ。そんな状態で太陽と模擬戦でもしたら俺の感覚が戻るまでに何回あいつに殺されると思う?もちろん太陽はそんな俺から得る物は何も無いし、俺も一方的に殺されて何も得られない。そんな模擬戦に何の意味がある?」
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