リングサイドブルー

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「ああ、いつもお茶持ってきてくれる子か。可愛いっすけど、好みじゃないですね。痩せた女にもいい思い出ないし、どっちみちいろいろあって、しばらく彼女作るのは無理なんで」 「ほう。なんでか最近、その台詞方々からよく聞くな。禁欲するとなんかいいことあんのか?」 「いいことっつーか……」 「めんどくせえな。女みてえに思わせぶりな話し方すんじゃねえよ。普段どおり、ふてぶてしい顔して何でもしれっと言っときゃいいのによ」  あくび混じりに言いたい放題だ。だが、不思議といやな気持ちはしない。橋爪と何を分かり合えているわけでもないが、過去一年半の電話でのやり取りで、親近感を覚えているからかもしれない。 (どちらかっつーと、ゆずさんよりヅメ男のほうが普通に腹立つこと言ってくるんだけど。電話で話してたときは腰低かったのに、まさかこうだとは) 「なんだよ、もの言いたげだな。なんでも言えよ。半分くらいは聞いてねえけどな」 「話す意味ないじゃないすか」  がははと歯茎を見せて笑い、橋爪はようやく仕事用の設計書を引っ張り出した。
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