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「昔うちの大学に特別講師として何回か、フリークスタンダードの代表、高岡さんが来たことがあったんです。
そのときにこの人の下で働いてみたいなって思って。フリークスタンダードって毎年一人か二人しか採らないでしょ。
だから倍率すごいのは知ってたんだけど、どうしてもあの会社で働きたかったから、受けたんです。面接のとき、もしかしたらいけるかな、なんて手ごたえも感じたんですけど、結果はだめでした」
一気にそこまで語って、千晃ははあ、と息を吐き出した。黙り込む優月にちらりと目を遣って、軽く笑って見せる。
「あのとき受かったのがゆずさんだったんだって知って、まず、すげえって思った。でも、もし俺が受かってたら、ゆずさんくらい出来るようになってたのかな、とか考えて嫉妬した。
同じキャリアなのにプログラミングはめちゃくちゃ早いし、正確だし、しかも綺麗だし。でもそれよりも、ゆずさんと仕事してると、怒ってるときでもなんでも、作るのが好きで仕方ないっていうのがガンガン伝わってくるから悔しくて。
ゆずさんが高岡さんから選ばれた理由がはっきりわかったら俺、自分が馬鹿みたいに感じてきて。……すみませんでした」
言葉にまとめようとすると、自分が何を思っていたのかがよく分かる。
これまでの捻くれた態度はなかったことにはならないが、恥も見栄も捨て、とにかく正直に話をした。すると、優月が頭を下げた。
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