リングサイドブルー

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「なんでそれ黙ってたの。もっと早く知りたかったよー、この情報」 「上辺では色々気遣ってもらえるけど、男の場合はそういう事情を特に理解されないの分かってるし、……フリークスタンダードと仕事するのに、子供を言い訳に使いたくなかったんで。だから俺もやりたくなくて勉強しなかったわけじゃ――」 「いいなあ、ちゃっきー!」 「……はあ?」戸惑う千晃に、 「ねえねえ、写真ないの?」優月はデスクを指先で叩きながらせがんできた。 千晃はしぶしぶポケットからスマートフォンを出し、写真フォルダを開いて優月に渡した。夏に撮った心暖の写真だ。 淡い水色のワンピースは、心暖のお気に入りだ。耳の高さで結った、ふたつ結びの髪の先は柔らかく内側に入っている。 背景には港に停泊する大型客船と、観光客たちが映り込んでいる。横浜に連れて行った時に撮った写真だ。 「ちゃっきーが髪結んであげてるの?」 「一応」 「このワンピースちゃっきーが選んだの?」 「そりゃまあ、そうですけど」 「あー、いいなあ。だってめちゃくちゃ可愛いじゃん、絶対美人になるよ。名前なんていうの? 三歳くらい?」 千晃は質問攻めを、両手で一旦ストップさせた。この食らいつきようは、一体何なんだろう。千晃のほうが驚いてしまった。
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