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「心に暖炉の暖の字で、ここあです。まさに三歳だけど……ゆずさん子供好きなんだ?」
「好きだよ好き、すげー大好き。俺、相手なんて誰でもいいから今すぐ子供欲しいもん。ね、今度ちゃっきーの家遊びに行ってもいい?」
「別にいいけど……」思わず了承してしまったが、本気で言っているのだろうか。
「じゃ、今日は?」優月が訊いてきた。
「え、今日? 早くね?! っていうかマジで来るの?」
「行く」
「俺、保育園のお迎えは母親に行ってもらってるから、一回実家迎えに行かなきゃならないんだけど」
「いいよ、俺も一緒に行くから。やったー、すげー楽しみ」優月はようやくスマートフォンを千晃に返した。
「……でもゆずさんマジで遊びにくるなら、俺そのあいだ勉強しよ。わかんなかったら色々質問できるし」
「あ、ちょうどいいね」
話の急展開がおかしくて、二人で笑い合ってしまった。一体今までは何だったのだろう。なぜ、子供がいるということを告げたら、それがハンデになると思ったのだろう。
対等な関係を望んでそうしていたはずだが、そもそもどんな対等を望んでいたのだろうか。改めて考えると馬鹿らしくなった。
自分で勝手に壁を作って、相手を受け入れまいとしている時点で、その答えをも、分からなくしているのだから。
優月は、状況を自然体のまま受け入れてくれている。少しだけ甘えられたら、何かが変わるだろうか。
以前首藤から言われていた言葉が、今頃になって現実味を帯びてきた。
「ゆずさん、今日一つお願いしたいことがあるんですが、いいですか」
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