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普通はこんなとき、勢いで突っ込んだことを訊いてしまった気まずさを感じそうなものだが、有紗にはそんな様子も見られない。
息の短い恋愛だった。他人にこの話をすれば、そのときどんなに本気だったかを伝えたとしても、『遊び』として受け取るだろう。若気の至りという言葉で、くるくるとまとめられてしまう。
だから、話をするのも馬鹿らしいと思っていたが、もしかしたらこの子は違うのかもしれない。首藤がよく、有紗の心の素直さに感心していたが、彼女の魅力はそういうところにあるのだろうか。
「でもまあ、子供って可愛いもんで、親はそれを見てるだけでも色んなこと乗り越えられるもんなんだなって。一緒に成長するのかな」
どのみち、初対面で話す内容ではない。無計画という言葉を否定しないまま、千晃は話題をそらした。
「まあ、そんなこんなで旅行なんて何年ぶりだろ?」
「心暖ちゃん、旅行中わたしが預かってもいいですよ? もちろん、心暖ちゃんが平気なら、だけど」
「いやあ、多分ゆずさんが離さないから……。でも、優しいなあ綿貫さん。想像どおりって感じで」
素直に好感を伝えてみると、
「へ?」有紗はぽかんと口をあけた。
「実は俺も、結構前から綿貫さんのこと知ってたんだよね。いつも総務部に郵便物取りに来てたし、それに……」千晃は心暖の頭を見下ろした。
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