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俺は声にならない叫びを上げて逃げ出した。背後からケタケタという甲高い笑い声と軽い足音が迫って来る。扉を開けて次の部屋に駆け込み、後ろ手に叩き付けるようにして扉を閉じる。背後を見ながら走り続けるとすぐ何かに突き当たった。暖かく柔らかい感触。振り向くと、そこにあったのは巨大なピンク色の肉塊だった。俺は気が遠くなった。
肉塊からは数え切れないほどの手が生えていた。肉塊が蠢くたびに、その手が差し招くようにざわざわと揺れた。
俺の膝が力を失い、その場に崩れ落ちた。ひくひくと痙攣じみた笑いがこみ上げてきた。
「困った人だ」
上から葛城の声が聞こえた。見上げると部屋の中央にある螺旋階段の中二階になった場所で葛城が俺を見下ろしていた。
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