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序
荒んだ野の中、ふつりと何かが切れたように、座り込んだ。
杖の代わりにと、無意識に地に突き立てようとしたそれは、結局、力が入らなかった腕とともに地に落ちた。
ザワザワ揺れる草木の中に、似つかわしくない無機質な音が響く。
虚ろな瞳を手元にやると、視界に入ってきたのは、無骨だがすらりと伸びた一振りの刀。
そして、その柄を握るボロボロで頼りない程に細く節ばった自らの指。
長い間手入れのされていない爪は欠けて、泥が入り込んでしまっている。さかむけやすり傷だらけの指を見て、以前は、まめだらけだったとはいえ、もう少し女らしかった筈だとぼんやり思った。
そうして、意図せずにぽつりと言葉が零れた。
「ごめんなさい…」
一体、誰に対しての謝罪なのか。
しかし、一度口にすると、堰を切ったように溢れ出した。
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