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「ごめんなさい、ごめんなさい…父上」
私のせいで、大切な場所を失った。私がいなければ、私が生まれなければ…。
そして、父と同じように、居場所を奪われた仲間の顔が浮かんでは消えてゆく。
―――ごめんなさい。
声にならぬ声で呟いた謝罪の言葉とともに、握りしめた刀の持ち主の顔が思い浮かぶ。
稽古場で、木刀を片手に闊達に笑う顔と、迷いを乗せながらも、真摯に自分を見つめてきた、最期の顔。
「…とし、まさ…さま」
その名を呼んでも、頬を伝う滴はない。最後に泣いたのはいつだったのだろう。流れた子とともに、涙すらも枯れ果てたというのか。
「どう…して……」
荒れた唇から、空虚な言葉が零れ落ちた。
――――どうして、私はまだ生きているのだろう、と。
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