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この時間なら席を必死で確保しなくてはいけないはずなのに、俺たちはおばちゃんに空いている席を教えてもらった。これも、裏メニューのひとつなのだろうか。
疑問に思いながらも、俺はカツカレーの方が気になって、コソコソっと佐藤に聞く。
どう見ても、カツカレー普通盛りにデザートの組み合わせにしか見えないけれど、何が違うのだろうか。
デザートのプリンが残っていることには驚きだけれど、絶対に頼むからと頼んでおけば、その分を作っておいてくれると聞いたことがある。
「秘密」
「ええー」
思わず、口を尖らしてしまう。
「じゃあ、何渡したんだよ? 食券買い置きしてるの?」
聞いたことはないが、できなくはなさそうだ。
「内緒」
カレーを口に運びながら、これまた佐藤は短く切り捨てる。教えてもらえないとなると、余計に気になるのはなぜなのだろうか。
「……プリン好きなの?」
「……どうかな?」
三連続でしらばっくれられて、俺は思いっきり膨れた。
「もういいよ!」
ガツガツと生姜焼きを口に運ぶ。
「ふふ」
と、佐藤が声を出して笑った。
先ほどよりもそれは楽しそうで。
「笑うな!」
と言いつつも、なんだか俺も笑えてきてしまった。
「なんだかんだで楽しそうじゃん」
「そんなことねえし」
塾の帰りの定番のファーストフード店。
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