31人が本棚に入れています
本棚に追加
「それができるなら、最初からしてる! それに学食のことは関係ないでしょ!」
「甘口カレーしか食べられないお子ちゃまなのに無理するからだ」
「うるさい! バカ! 歩美に振られちゃえ!」
「バッ! おまえ、それは禁句だ!」
佐藤の学食の秘密はそういうことなのか。事情がうっすらと透けて見える。けれど俺の気持ちはモヤモヤしてくる。佐藤は、俺にあんな風に話してくれたことはない。
ヒソヒソしていたはずの声はボリュームが大きくなって、もう耳をつけなくとも十分に聞こえる。俺は、教室のドアに背を向けて座った。
結局、光紀は何をしようとしていたんだ?
そうやって考え込んでいたから、気づくのが遅れた。
「おい! どこ行くんだよ!」
「トイレ! いちいち聞かないでくれる!?」
気づいた時には、佐藤がすごい勢いでドアを開け放っていて。
「……よう」
思わず振り向いた俺と佐藤の目線が真正面からぶつかる。佐藤が固まった。
「……聞いてた?」
佐藤が俺からぎこちなく目線を外す。
「まあ」
俺は、ゆっくりと立ち上がって、手慰みにズボンの後ろをはらう。
「どこから?」
「だいたいは」
佐藤が唇を噛んだ。
「なあ、俺って騙されてたの?」
最初のコメントを投稿しよう!