恋するバツゲーム

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「だから、言ったろ。俺は佐藤に使われただけ。仲良いのは歩美。協力し始めてからかなあ。あんなに言うようになったの」  がむしゃらなんだよ。と光紀は続ける。 「誰かさんに振り向いてもらうのに、それだけがむしゃらなんだよねー。俺、そういうの嫌いじゃないんだ」  なあ、佐藤。俺だって余裕ないよ。  手探りでかき分けているこの道に、俺たちはいつも翻弄されていて。  佐藤のおさげ頭を思い出す。  がむしゃらでいじっぱりで素直じゃない。  俺は恋がうまくないけど、頑張るならそんな佐藤とがいいな。  教室のドアに手をかける。 「あ、多分図書室だと思うぜ。歩美と喧嘩するといつもそこに行ってるから」  手を上げて礼を言う。そのまま、出て行こうとして思い直した。 「光紀」 「なんだ?」 「佐藤は、俺のだからな」  はいはいと笑って、光紀は早く行けと言うように手を振った。 「俺には最初からこのケンカ、惚気にしか見えてないからな」  その言葉を背に走り出す。  そうか。これは、ただのケンカだったのか。  そう思うと気が軽くなる。  これからするのは、話し合いでもましてや罵り合いでもない。  仲直りだ。  図書室はまだ早朝だからかほとんど人がいなかった。  奥の閲覧席で顔を机に伏せているおさげ頭を見つける。 「佐藤」  ピクリと佐藤の肩が跳ねた。     
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