恋するバツゲーム

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 俺の言葉に佐藤の声が詰まる。赤くなった顔を隠すように佐藤が顔を伏せる。 「からかわないで。私は小林くんを騙したんだから」 「からかってなんかない。なあ、ちゃんと俺の目見てよ」  佐藤の目が泳ぐ。恐る恐るといったように俺の方を伺うように見上げた。  ふっ、と思わず笑ってしまう。 「なっ! 絶対からかってる!」 「だって、佐藤、可愛いから」 「――! もうやだ!」  また、佐藤が顔を突っ伏してしまう。 「なあ、佐藤、ごめんて」  俺は椅子を引いて、佐藤の隣に座る。 「でさ、佐藤の答えは?」  しばらくして俺が動かないのがわかると、佐藤は勢いよく立ち上がった。 「私の方が先に好きだったんだから!」  そういうと、また逃げようとする。  俺は今度こそ、その手を捕まえた。 「離してよ!」 「やだ」 「なんで!?」 「もうちょっとこうしてようよ」  そう言って、手を掴んだまま隣の椅子に佐藤を座らせる。  佐藤の色が染み付いたこの想いが大きくなっていくのがわかる。  また、間違うかもしれない。  けれど、そんな時にはちゃんと伝えよう。 「好きだよ」  佐藤の手がじんわりと熱を持っていく。  俺たちの恋するバツゲームは、まだ始まったばっかりだ。
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