恋するバツゲーム

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 その視線の先は。見なくてもわかる。俺に好きなやつなんていない。ということは。 「無理無理無理!」  ブンブン、と頭を振る。思わずなのか、なんなのか、横に振っていた両手首を光紀が掴んでくる。 「無理じゃない! 今こそ行く時だ!」  クラスメイトがざわつく。やっぱり、という声がそこかしこで聞こえる。  こうなりゃ。  もうやけだ。  男好きと思われて高校生活を過ごすよりまし!  俺は、光紀の手を振り払って立ち上がると、目を伏せたまま机の方を向く。 「佐藤奈美子さん! 好きだ! 付き合ってくださああい!!!!」  おおー、と何に感心したのかクラスメイトが声をあげる。 「で、誰だっけ? 佐藤?」  がたり、と椅子が動く音がした。おそるおそる顔をあげる。  本を置いたまま、佐藤は無表情に立っていた。  いいから、振ってくれ!  心の中で念じる。 「いいけど」  エーーーーー!  と教室中に声が響き渡る。そこには、俺の声も混ざっていた。  うんうん、と光紀が満足したように頷いている。  ウソだろ! なんでOKするんだよ!  俺はうずくまって頭を抱えた。よかったなあ。と立川が嬉しそうに背中を叩いてくる。俺がドキドキしすぎてしゃがみこんだと思ったらしい。  佐藤は、もうなんでもなかったかのように椅子に座る。     
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