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え? それだけ? で、俺、これはどうすればいいわけ?
「もう授業始まるよ」
助かった。
佐藤のその一言でその場は解散になった。黒板は丁寧に消しておく。
「小林が地味子のこと好きだなんて知らなかったぜ」
立川が無邪気に言ってくる。
ははは、と乾いた笑いを返すしかない。
席につく間に、佐藤がどんな顔をしているのか見ようと思ったけれど、メガネが光を反射して表情はよくわからなかった。
1限目の間、ずっとどうすればいいかを考えていたけれど、結局何も思いつかなかった。頭を抱えている俺のところへ佐藤が歩いてくる。
「お弁当? 学食?」
「へ?」
思わず身構えたのに、いきなり聞かれた内容に間抜けた声が出る。昼の話らしい。
「学食だけど」
どういう顔をしていいのかわからなくて、目線を外しながら答えた。
「じゃあ、お昼に」
お昼に?
聞き返そうと目線を戻した時には、すでに佐藤は自分の席に戻っていた。
おおー、と周りが盛り上がっている。
「お前な、恥ずかしいからって女から誘わすなよー」
立川がニヤニヤしながら俺の肩を小突いてくる。
「は? あ、ああ。うん」
うだつの上がらないと自分でもわかるほどに惚けた声が出る。
まさか、あっちから話しかけてくれるとは思っていなかった。
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