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指示が彼女で行動が僕らしい。別にそれが嫌だというつもりは、百割中二割ぐらいしかないのだけど、とりあえず、手伝う必要がある気がした。
だって、一人でテント建てられないんだもん。
「料理できたぞ」
「おぉー」
彼女は両手を小さく合わせて驚く。可愛さを学ぶみたいな本を以前、読んでいたことを思い出して、これが素なのか、それとも演技なのか分からない。余計なことをすると、こういう弊害もあるのだと、少し僕はげんなりした。
とりあえず持ってきた料理はカレーである。彼女が用意してきたものを並べてみると、明らかだった。特にカレールーが食材の入ったバケットに対して乱雑にしまわれてたのが確実な証拠となった。別に事件というわけではないが。
「美味しいじゃん。なかなか料理上手なんだ」
彼女だったら、素直に褒めることは無いだろうと思い込んでいたが、そうでもないらしい。僕は自分でも恥ずかしいことに少し照れていた。小声で、私が作るよりもいいじゃない。なんて言ったように感じたけど、それは詮索しないでおいた。これ以上、自分を遠回しに褒めさせるのは、あまり心地の良い行為に思えなかったからだ。
「あんまりだね」
彼女の中で話が変わったのかと思ったら、そういうことではなかったらしい。
いつの間にか暮れていた空に、見えるものはなかった。
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