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ラッキーという名の悪夢
街はごった返していた。ソルクリスタルが消え、ムーンクリスタルの青白い光が、北西の空に昇っていた。
エーリッヒというプレイヤーネームの若者が、ファスートの町に現れた。
キョロキョロとした、いかにも場慣れしていない所作に町の男達はエーリッヒに近づいた。
「にーちゃん初めてかい?いい宿屋があるんだけどよ」
いや。若者の返事に男は食い下がった。
「何だよ!この町は初めてなんだろ?!いいから任せなって!何でも案内するし手配もするぜ!あんたレベルは?!どうせ1だろうがよ!」
男の言葉に、エーリッヒは照れ臭そうに答えた。プレイヤーカードと呼ばれる、身分証がわりのプレートを指し示した。
「すいません。俺これでして」
カードには、レベル50と表示されていた。
ここで、天文学的な幸運話となる。
女神塔において、レベルアップは非常にシビアな現象と言えた。
それを見た者はほとんどおらず、第一階層において、レベル2になると、最早勇者扱いとなる。手を出そうにも傷もつけられない、ほぼ絶対的な存在となるのだ。
その日、エーリッヒは単身冒険に出ていた。
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