41人が本棚に入れています
本棚に追加
/17ページ
騒めきが止まらない会議室を出ると外で、真里が待っている。
真里は微笑みながら言った。
「健二さん、私の上司がお部屋に来るようにと・・」
「真里さん、君は?」
健二の問いを無視して、真里が続ける。
「早く行って、山下副社長がお待ちよ」
山下副社長の部屋に入ると、ソファに座るように促された。
健二が腰を降ろすと、山下が前に座る。
「ありがとう。君のお陰で、我が社は重大なコンプライアンス違反を未然に防ぐ事が出来た。感謝している」
山下は、微笑みながら言った。
「開発PEDの件も、是非、受けて欲しい」
健二は光栄に思いながらも自分の考えを山下に告げた。
「山下さん、開発PEDは実質、車両開発のトップです。それを私の様な外部の、また若輩者にお任せになるのはリスクが高いと思います。何故私に?」
山下は頷きながら言った。
「君のチーム設計を見たが、あれは素晴らしい。久しぶりに技術者の血が騒いだよ。私は根っからのエンジニアだ。だから君の実力を高く評価している。PEDは技術で語る仕事だ。是非、我が社の若い技術者に、君のノウハウを伝えて欲しい」
健二は、山下の想いに感謝しながら、決心をしていた。これは技術者冥利に尽きるオファーだ。
「山下さん、お受けさせて下さい。頑張ります。」
山下が大きく頷いた。
「ところで、君は、真里君と付き合っているんだって。流石だね。あの娘を落とすなんて。仕事ができる男は、手も速いということか・・ 」
山下が大きな声で笑った。
健二はバツが悪そうに頭を掻いた。
最初のコメントを投稿しよう!