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軽自動車の開発において、燃費は商品の販売戦略上もっとも重要な性能である。しかしながら、日進自動車の軽自動車エンジンは、競合他社エンジンより5%ほど燃費性能が不足していた。
この挽回の為、健二のチームでは15kg車両重量軽量化に取り組んでいた。
車両の軽量化は容易な開発ではなかった。必要な衝突安全性能、車体剛性を満足し、軽量化していく技術開発は、車体構造を抜本から見直す事もあり、三次元CAD(CATIA)上で、設計を変更してシュミレーションを廻すという事を繰り返していた。なんとか13kgの追加軽量化の目処はたっていたが、後、2kgの目処がどうしても立たない。
既に日付は変わり、時計は午前1時を廻っていた。
しかし未だ、健二と部下の高松が、この対策の方向性に悪戦苦闘していた。
2時を指す直前に、不意に高松が声をあげた。
「高橋さん、やりました、シュミレーションOKです。2.1kgの軽量化アイテムの目処が立ちました」
健二は、自分の席を立って、高松の席のCADを覗き込む。
そこには、フロントサイドメンバーという部品の材料を超ハイテン化して、シュミレーションを廻した結果が示されていた。質量、剛性、衝突性能、全て合格のデータだった。
ただし・・
「コストと投資か・・・」健二は呟いた。
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