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「高橋君、実は、これは別のエンジニアリング会社”日本リサーチ”の設計案だ。彼らの案は、重量を更に5kg低減し、コストは1500円、投資は1億円改善出来ると言っている」
高橋は、その資料を受け取ると、内容を簡単に読み込んだ。
「長谷川さん、これは主要構造部材の板厚を20%低減している案です。これでは基本的な剛性、衝突安全性能が満足できません」
長谷川は、また首を振りながら言った。
「彼らの解析では充分な性能と出ている。君の会社は少し過剰設計ではないのかね?」
健二は目を見開いた。(何を言って??)
「いずれにしろ、君の案は不採用だ。今回は日本リサーチの設計案を採用する」
健二は、自分の席に戻ると、日本リサーチの設計案をCAD上で再現した。
そのシュミレーションの結果が出たのは、やはり日付を跨いでいたが、剛性は設計基準の-20%、衝突安全性能に至っては法規の最低レベルを満足出来ないと出た。
翌日、健二は、長谷川の上司、小野寺常務にアポを取った。そして、解析結果を持って小野寺の役員室を訪れた。
「高橋君、長谷川君からは話を聞いている。今回は、残念だったね」
と、小野寺が自分の席を立たず言った。
健二は、部屋に入りドアを閉めると、立ったまま話を始めた。
「小野寺さん、日本リサーチの設計には疑念があります。あの解析は正しい評価になっていません。お考え直して頂けませんか?」
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