軽自動車開発

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小野寺は、微笑みながら言った。 「高橋君、全ての仕事にはバランスというものが必要だ。君のチームは非常に真面目で、全てを成立させる為に取組んでくれるのは知っている。しかし軽自動車の開発では、妥協が必要なのだ」 健二は言った 「バランスが必要なのはおっしゃる通りです。ただし、日本リサーチの案は、法規要求も未達となっています。もう一度再考頂くべきと思います」 小野寺常務は、首を振りながら言った 「既に、その点は考慮済だ。今回は、それも踏まえ、日本リサーチの案を採用すると ”私が” 決めた。結果、充分な燃費性能とコストが実現される」 健二は、愕然とした。小野寺と長谷川は設計基準の未達を"知った"上で判断していたのだ・・ 「小野寺さん、これはコンプライアンスの問題と思います。私は、この問題を山下副社長に上程したいと思います」 突如、小野寺が席から立ち上がった。顔を真っ赤にしている。 「おまえは、外注のくせに、天下の日進自動車の常務に口答えするのか!! 直ぐに出て行け!!」 健二は考えた。確かにこれは日進自動車が判断する問題だ。だが、設計者としてのプライドがどうしても許せなかった。     
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