タマシイ狂奏曲

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「それなら尚更安心しろ。 俺も、お前と同じ運命だ。 だから…な。 一緒に閻魔さんに裁かれるんなら、行く所も同じだろう?」 俺を真っ直ぐに見据える親父の目は 俺の中の『何か』を必死で探すかのように、一分の曇りも無い煌めきをそこに宿していた。 「まさか親父…俺と同じ試験を…?」 夕暮れを誘う蝉時雨が何時しか携帯ラジオのそれと交わる。 あんなに耳障りだった雑音が、今五感の心地良い振動と共に、独創的な協奏曲へと変貌しながら喉を滑り落ちてゆく。 「閻魔さんも、なかなか小気味良い試練を与えてくれたもんだ。」 体温を忘れた体に金色の熱が宿る。 失った時間が、置き忘れた心が 再び形を成していくようで、俺は声を上げて泣いていた。 「そんな…馬鹿な賭けに乗りやがって… 俺があんたを探してなきゃ、どうするつもりだったんだよ…っ!」 「なに…見つけたさ。 血の濃さってのは、そういうもんだ。」
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