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コンクリートの壁に生々しく残る血痕に伸ばした指先が、冷たい壁面に飲み込まれて空を切る。
そっか。死んでるんだよな俺。
当然の事実を自身に突きつけながら、俺は怨念を込めて天を仰ぐ。
「魂胆見え見えなんだよ!
言っとくが俺は親父の顔も見たくねぇんだからな!」
空が返事をするわけでもなし、高く蒼色を縫って飛ぶ白い羽ばたきに目を細めながら
あの日の耳障りな雑音が聞こえてきそうな気がして、いたたまれなくなった俺はひとまずその場を離れた。
とはいえ、これからどうしたものか。
道行く人の群れをすり抜けながら、文字通り地に足の着かない俺の体は目的も定まらないままに、ただフワフワと現世をさまよっていた。
なんだか白ける。
だいたいこの世に未練があるわけでもなし、何が悲しくて此処に居るのか。
それ以前に、本当に天国とやらが存在したとして、だ。
行けた所で特別嬉しいと思える世界なのかすら定かじゃないんだ。
「俺は一体、どうなりたいんだ…」
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