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突然の呼び捨てに面食らうも、沙紀は子供呼ばわりされたことにムッとする。
「子供ってどういうことよ! まだ小学生の悠ちゃんの方が子供じゃない!」
先ほどまで、悠太が自分より早く大人へ進んでいることにショックを受けていたことはすっかり忘れ、沙紀は子供扱いされたことにご立腹だった。
「あ、その悠ちゃんってやめてくれる?」
「え?」
子供扱いしたことをさらっとスルーした悠太は、急に注文を付けてきた。
「悠太って呼んで」
「何で? ずっと悠ちゃんだったじゃない」
沙紀は首を傾げて、いきなりどうしたのかと悠太を窺う。
「いいから。悠太って呼んで」
悠太は笑顔で返すが、目は笑っていなかった。
「ゆ、悠ちゃん?」
「ゆ・う・た」
沙紀が困惑して悠太を呼ぶも、名前で呼べとばかりに強調して戻してくる。
どうしようもない沙紀は、口をつぐんで悠太の様子を見るが、その態度は変わりそうにない。
何で急にこんなことになっているのか分からなかったが、とりあえず沙紀には頷く以外の選択肢はなさそうだった。
「沙紀?」
だめ押しとばかりに、悠太がもう一度、沙紀を呼び、沙紀は仕方ないと諦め混じりに名前を呼んだ。
「……悠太」
結局、悠太に笑顔で押しきられてしまった。
沙紀は不満いっぱいの顔を見られないようにうつむき、心の中で愚痴をこぼす。
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