ショタナジミ!

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 照りつける夏の日差しが、アスファルトをジリジリと焼くお昼少し前。  セーラー服を着てカバンを肩にかけた一人の少女、沙紀が、この暑さのなかを走っていた。  汗をだらだらと流しながら焦る沙紀は、目的の人を見付けて手を振る。 「ごめん! 悠ちゃんお待たせ~!」  沙紀の視線の先には、駄菓子屋の軒先でベンチに座っている男の子がいた。  男の子は黒の帽子をかぶり、少女と違い半袖長ズボンの私服だった。  男の子の隣には、黒色のランドセルが置いてある。  沙紀の声で、暑さに負けたかのように首を前に垂れていた男の子、悠太は、サッと顔を上げ、沙紀の方を見た。  悠太と目が合った沙紀は、ことさら強く手を振る。 「待ったよね。ごめん。ホームルームが長引いちゃって」  悠太の元にたどり着いた沙紀は、悠太の前に立ち、ポケットから出したハンカチで汗を拭く。 「暑いのにごめんね」  ベンチは駄菓子屋の屋根で日陰になっているとはいえ、朝から太陽によって熱された空気は暑く、吹き抜ける風さえも生ぬるい。  こんなところで待ち続けることになった悠太は、とても辛かったであろうが、悠太は首を横に振って「これぐらいの暑さなんて、なんでもない」と答えた。 「いやいや、そんなことないでしょ。無理してると熱中症になっちゃうよ。駄菓子屋に入って待ってても良かったんだよ。……ってこんなこと話してる暇があるなら、さっさと中に入ろう」
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