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沙紀は悠太の手を引きながら歩き、駄菓子屋の扉を開ける。
すると、沙紀の肌を撫でていくように、冷たい空気が身体をすり抜けて行った。
「涼しい~」
店の中の冷たさに誘われるように、沙紀は恍惚の表情で入っていく。
「今日は何買う~?」
店の中程にまで入って、沙紀は悠太を振り返る。
すると、悠太は顔を真っ赤にして、固まっていた。
「え? 悠ちゃん大丈夫? 顔真っ赤だよ! まさか熱中症? 家に帰ろうか? オバチャン帰ってくるまで、私がいるからさ」
沙紀と悠太は家が隣同士で、赤ちゃんの頃から家族ぐるみ付き合いがある。
今日は悠太の母親の帰りが少し遅くて家に誰もおらず、それならと二人で寄り道して帰ることになっていた。
「悠ちゃん? 大丈夫?」
呼んでも少し下を見て反応しない悠太に、沙紀は顔を近付けて、無理やり悠太の視界に入る。
「うわっ!」
ようやく沙紀の顔を見た悠太は、驚きの声を上げて沙紀から離れた。
繋いでいた手も外れてしまう。
「うわって何よ。うわって」
口を尖らして、沙紀は大げさに不満顔をする。
「ご、ごめん」
すぐに謝った悠太に、沙紀は不満顔をやめて、悠太の顔色を確認する。
悠太の顔はまだ赤い。
それどころか、沙紀には悠太の顔がさらに赤くなったように見えた。
「具合悪くない? 熱中症なら家に帰ろう」
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