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「彼女がいるかどうか気になる?」
「それは……。気になるか気にならないかで言えば気になるけど……」
「ふーん」
悠太はそれだけ言って、アイス選びに視線を下に戻してしまった。
いつもと違う空気感に、何だか気圧されてしまう沙紀だが、まだ何も答えていない悠太にもう一度聞く。
「で、付き合っている人はいるの?」
「いないよ」
今度はすんなり答えた悠太にやっぱりねと沙紀はホッとするが、次の言葉に驚いた。
「付き合っている人はいないけど、好きな人はいるよ」
「え!」
悠太は沙紀を見ずにしれっと答えると、アイスを掴んでさっさと会計に行ってしまった。
「悠ちゃんに好きな人が……」
考えていなかった回答に戸惑う沙紀は、茫然としてしまう。
沙紀には好きな人もいない。
まだ子供だと思っていた悠太が、沙紀よりも早く大人への階段を上っていた。
悠太のことなら何でも知っていたはずなのに、沙紀には悠太が急に遠くなったかのように感じた。
そこへ、アイスの会計が終わった悠太が戻ってくる。
「あ、ごめん。まだアイスを選んでないや」
ショックでまともに考えられないが、悠太を待たせるわけにはいかないと沙紀はアイス選びに戻る。
「少し待ってて。すぐ選ぶか――。わわっ!」
アイスケースの中を見ていた沙紀は、急に引っ張られて足をもつれさせた。
「ち、ちょっと何するの悠ちゃん!」
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