2人が本棚に入れています
本棚に追加
/12ページ
振り向かずに、悠太は沙紀を引いたままずんずん進む。
悠太が腕を掴んでいたので転ばずにすんだが、足をもつれさせた原因は悠太にある。
「危ないじゃない!」
沙紀は怒って腕を引き返したが、悠太はしっかり掴んで離そうとせずに、そのまま店を出た。
「もう! 何なの! 私はまだアイスを買ってないのに」
やっと沙紀の腕を解放した悠太は、手に持っていたアイスの包装をバリッと開け、中身を取り出した。
それは、半分にするタイプのチューブ型アイスだった。
悠太はそのアイスを分けて、一つを沙紀に差し出した。
「え……?」
わけが分からない沙紀は戸惑うばかりだったが、悠太との長い付き合いゆえに、すんなりとそのアイスを受け取る。
「……どういうこと?」
頭の中にクエスチョンばかりが浮かぶ沙紀は、悠太と手元のアイスを交互に見ながら悠太を窺う。
「半分のアイスの相手は俺にして」
悠太は沙紀を真っ直ぐに見つめながら、そう答えた。
「悠ちゃん……?」
いつもと違う命令口調の悠太の顔は、少しばかり赤い。
そこでようやく沙紀は理解した。
「なんだ。悠ちゃんも半分にするアイスが食べたかったんだ」
「は?」
「これ美味しいよね。チューブ型アイスのコーヒー味」
最初のコメントを投稿しよう!