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伝説の槍
「いよいよだな」
グランがそう言うと、エミリ、ケント、アーサーの3人は力強く頷いた。
神殿の奥深く。重く閉ざされた石扉には大きな円が描かれておりその円上に5箇所、くぼみがある。ケントは赤、青、黄、緑、紫の水晶をそれぞれ嵌め込む。すると、5つの水晶がほんのりと光り、石扉が開いた。
「やはり開きました。この本の言い伝えが真実ならば、この奥に伝説の槍、ホーリートライデントがあるはずです」
ケントは右手に持っている本を皆に見せながら真剣な眼差しでそう言う。
「さ、早く行こう!」
魔法使いのエミリは小型のステッキを扉の向こうへと向ける。まだ14歳といえど、その卓越した魔力は宮廷魔道士ですら舌を巻くほどだ。
「エミリ、焦るものではありません」
「いいじゃんかー!お兄ちゃんのケチ!」
「エミリ……私はお兄ちゃんではないと何度言ったら分かるのだ?」
ケントは困惑した表情で言う。冷静沈着な学者の卵もこれでは形無しである。
「もう!照れちゃって!さ、行くよ!」
エミリはそう言うと、スタスタと先を行く。
「お兄ちゃんも大変だな」
ケントを右ひじでつつきながらグランはそう揶揄する。ケントの目にはグランの固く太く、そして美しい筋骨隆々のいかにも武闘家らしい右腕が映った。
「で、どう思ってるのよ?エミリのこと」
今度はアーサーがケントに尋ねる。
「どう、と言いますと?」
「だから要するに……女として見てるのか?ってことだよ」
「……私はエミリの付き添いでしかありません。それに、歳だって5つも離れています」
ケントはそう答える。エミリは魔力こそ卓抜したものを持っているが、なにせ14歳。魔法書の解読など学力面での不安を持ち合わせている。そこで、エターナル国立学校古文学科主席合格者である学生・ケントがエミリの補助役として同行することになった、という経緯がある。
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