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いちいち顔晒したりしないって
3人と3体が第1回目のダンジョン探索に出た翌日、満貴はタブレットにペンを走らせていた。
新しいモンスターのデザインについて考えているのだ。人型にするか、獣型にするか?
下書きを書き上げると早かった。腕の代わりに触手を生やし、蛙状の頭をした女の魔物。
(あんまりオリジナルやりすぎてもついてこないんだけど、少しくらいはね?)
名前は惨めさを意味するミザリーとした。
無論、元ネタはそちらではなく有名なホラー小説だ。
こうやってデスゲームを盛り上げる方法を考え、気分転換に楓達の相手をするのは楽しいが、慣れてくるにつれ単調さが目に付くようになる。
満貴は燃料を投下する事にした。
うっぷん晴らしメインだが、別人の顔で一暴れして来る事にする。
満貴の姿が変わる。
束を幾つも作った弾けるような頭髪、唇が厚く、笑うとエクボが浮き出る。
高校生の頃、自分をからかってきた男子生徒である。柔道の授業で組み付き、肩を脱臼させてからはまともに口を利かなくなったが、遠巻きに罵倒された事は何度かあった。
記憶ではなく、蓄積された「記録」から引き出しただけあって、その再現度は正確無比。
(あ~、ヤバい。なんかイライラしてきた)
血が沸き立つのがわかる。
記憶がフラッシュバックすると同時に、思い出したくもない名前まで思い出してしまった。
(イライラするからぁ~ww満貴行きまーすww)
正午前、海塚市中区に置かれたNDD西日本海塚支店。
社内ミーティングを終え、自身のデスクに戻った海野の背後に、ストリート系の装いの青年が現れた。
青年は手に防火斧を持っており、それを躊躇無く海野の後頭部に打ち降ろした。
顔面がデスクに叩きつけられ、耳障りな音が響く。視線を集めた青年は吼えた。
「お仕事お疲れ様です!!河合啓介っす!!河合啓介が皆様に無期限休暇をあげます!!イェエエェェ――!!」
啓介は口を裂けそうなほど吊り上げて、手近にいた社員に斧を叩きつける。
ホラー映画の殺人鬼の如き剛腕で、頭蓋骨を真っ二つにし、首を一振りで両断していく。
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