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他に必要そうなものが思いつかなかったので、玄関の脇に掛けてあったステッキを1本手に取り出発。
スマホと財布は部屋に置き、自宅の合鍵はチェーンで腰のベルトに繋いだ。ステッキの支柱部分は耐食アルミ、杖頭は樫。
武器代わりに実家から持ってきたが、このような形で役に立つとは。
(包丁の方が…いや、いいか)
当てもなく、通路の右手に進む。
満貴の部屋のドアは、通路の壁に埋め込まれている。
真っすぐ歩いていくと、視界の隅に短い階段が時折現れるが、地上への出入口は見当たらない。
人通りがなく、非常に心細い。通路の突き当りで、満貴は無人のベンチと、その上に乗った段ボール箱に出会った。
満貴はへっぴり腰でステッキの先を向ける。
すり足で距離を詰め、腰を入れて一突き。派手な音を立てて、段ボールに穴が空いた。
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