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しばらく様子を窺うが、爆発などはしない。思い切って近づき、開けてみると、中には大量のポーチが付いたベストが入っていた。
ポーチを開けてみるが、全て空だ。
「うーん…ないよりマシか」
何がマシなのだろう、と口に出してから気付く。
まるでこれが必要な事態に陥っていると言わんばかりの口ぶりではないか。
たどたどしい手つきでベストを着込むと、サイズはピッタリだ。
(何なんだ、この状況?)
敵はゾンビだけではなかった。
獣とも人ともつかぬ、二足歩行の怪物。犬くらいの大きさのネズミ、電撃を放つ羽の生えた小人。
小人に話しかけてみたが、忍び笑いだけで返事は無かった。その頃になると、満貴もある種の諦めに達していた。
暴力を振るうという事。生きている者に対し、殺害だけを目的に凶器を振り下ろす。
収穫は拾った道具だけではなかった。
妙に好戦的なネズミに体当たりを浴びせられた時、逆に相手が吹き飛んだのだ。
困惑しているが、何度か戦闘を重ねるうち、攻撃が稀に反射される事が分かった。
(んだこれ?超能力?)
考えている通りなら劇的に生存率が上がるが、確かめるのはリスクが大きい。
反射をあまり当てにしないように考えるが、他にもあるかもしれないと満貴は思った。
これといった変化は感じないのだが――そこまで考えた時、甲高い悲鳴が耳に飛び込んできた。
(人!)
悲鳴の聞こえた方に駆けだす。
再び声がした時、身体がふわりと浮かび上がったように感じた。
満貴の脚力が上昇して、5秒弱。満貴は怪物に襲われている一人の女の元に駆けつける事が出来た。
グレーのビジネススーツに身を包んでいる20代前半の女だ。
髪をボブカットにしており、やや垂れ気味な目元は子犬のように優しい。
手も足も長く、やせ型だが、華奢ではなく程よく筋肉のついたアスリート体型。しかし、乳房は服の上からでも存在感がある。
引き攣った顔の彼女に、宙を舞う男の首が迫る。耳が蝙蝠の羽根のようになっており、それで空を飛んでいるのだ。
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