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……
「誰?」
体の感覚は全くなかったが、思考は戻っていた。
今まで麻酔をした事がなかったが、これが麻酔から覚めた感覚なのかと、案外ハッキリと目覚めた事に驚いて、誰かわからない声の主を探す。
『私、モモ』
「モモ?!」
自分では飛び起きてモモの姿を確かめているつもりだったが、体の感覚がないせいで、今自分の体がどんな状態なのかさえわからない。
視界もまぶたが開いている感覚もなく、開けたくても空気を開いているような気持ちで、自分の意識しか動かない。
「モモ、どこにいるの?」
とりあえず体の感覚が戻るまでモモと話を続けたくて、モモの声がする方を意識する。
……
しかし、モモの声のする方を意識すればするほど、モモの声は自分の内側から聞こえてきている気がする。
「……モモ?」
もう一度確かめたくて、モモを呼ぶ。
……
『ここにいる』
「え?」
モモの声が自分の内側から聞こえた。
驚いて、自分の意識が外に向く。
『子供達は、私といる』
……
まるで自分の中にモモがいて、自分は外にいるような感覚がした。
『…花菜の血液をもらって、4次元に行けた』
……
『4次元で、言葉を使うのは少し難しい。4次元の事を言語に変換する事に、慣れていないから』
モモが話す前に、モモの感情と感覚が私へと伝わる。
4次元での感覚を、3次元の少ない言語にまとめるのは、確かに難しい気がする。
幼い頃に4次元の感覚に慣れていた私には、3次元の言語と4次元の感覚を同時に覚えられたが、大人になってから知るのは、言語化は難しい。
「…子供達を、救えたの?」
簡単な言葉でこたえられそうな質問をモモへ投げる。
『うん。誰にも見つかっていない。皆、4次元にいる』
「よかった…」
モモのその言葉に、一番成功したい計画がうまく行った事で、ホッとした自分の感覚がモモと同調した事を感じる。
『私達の事は、もう心配しなくても大丈夫。だから、花菜は自分の事を考えて。自分がどうしたいかを優先するの。今度は自分を、助けてあげて』
モモから大丈夫という安心の感覚と、私への想いを感じる。
モモは、自分がどうしたいかを優先した事で、子供達を助けに行き、自然と4次元へ行けた。
モモからその時の感情や感覚が伝わる。
モモは、自分を優先すれば、うまく行く事を私へ伝えたいようだった。
言語にしなくてもそれが伝わり、私の内側にいたモモが、内側をひっくり返して外側に出る。
……
「私は、私を生きていく。第3の人類の事をどうするかなんて、私にはわからない。阻止する事より、私は自分の為に生きたい…」
……
モモが外側に出た事により、内側にあった自分でも知らない想いが言語化して外へ出る。
自分がそう思っていた事に自分で驚いたが、感情は素直に『自由』という事を自分に伝えてくれた。
……
『ありがとう』
外側に出たモモが、そう言ってくれたような気がした。
そして、意識は少しずつ薄れて行き、今度は体の感覚が戻ってくるのを感じながら、意識がなくなった。
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