未来

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…… …… 少し寒さを感じ、二の腕に鳥肌が浮き出たのを感じた。 白と黒が混ざり合い、灰色になると同時に眼球の重さを感じた。 『……あ』 自分の体に、自分の意識が戻っていた事に気づき、自ら閉じていたまぶたをそっと開いてみる。 …… 目を開けると、自分を引く重力が認識され、後頭部と背中に引力を感じる。 ノアに麻酔をされた時と同じ状態のまま、私はそこにいた。 …… 頭は固定されていなかったが、すぐには動かすことができず、視線だけ動かして辺りを確認する。 麻酔が切れたのだろうか? どのくらいこの状態でいたのだろうか? ノアは計画を実行したのだろうか? 知りたい事はたくさんあったが、自分を生きたいと願った私は、とにかくここから逃げ出して自由になりたいと感じていた。 ! 「目を覚ましたようだな」 突然足元から気配を感じ、その気配が自分へと近づいて声をかけた。 「そんなに好きなのか?」 声は、疑問と呆れの感情を発しながら、拘束されている私のベッドに手をついた。 「…あ、心拍数がまた上がった。ほら、見てみろよ、触れば…ほら」 そう言って私の手を握り、私を拘束している透明の布に表示された心拍数の数値を指差した。 「前の俺はどんな奴だった?どんな俺が好きだった?」 握る手の指を私の指へと絡め、今度は顔を私へ近づける。 「嘘だろ?マジか?」 近づけた私の顔と、腕に表示された心拍数を交互に見ながら、イチは好奇心を出しながら笑った。
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