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『ガタンッ』
!!
「イチ?!」
「……っ」
「イチ?!どうしたの?!」
イチは急に頭を押さえながら私の座るベッドに倒れた。
何かが頭に当たった様子もなく、何が起こったのかわからなかった。
そして、ベッドに顔を伏せたままのイチの肩に触ると、小刻みに震え、奥歯を噛み締めるギリギリという音がイチから聞こえた。
「イチ?!……誰か!誰か来て!!」
様子がおかしいと思い、立ち上がって大声で人を呼んだ。
外へ連絡する方法はないかと辺りを見回すが、電話などはなく、監視カメラもなかった。
「人を呼んでくるから、ここに座って!」
ベッドから落ちそうになっているイチの頭を押さえながら、近くにある椅子を足で引き寄せ、イチを座らせようと腰に手を回す。
「……だ」
「え?」
イチが苦しそうな小さな声で何かを言った。
「…呼ぶ…な」
小さな声でそう言って、腰に回した私の手を掴んだ。
「でも…頭が痛いの?何かおかしいよ、診てもらった方がいいよ」
チラリと見えたイチの顔は、青白く、涼しい部屋なのに、汗が流れていた。
「大丈夫…だから、少し待てば…治まる…」
イチの呼吸は荒く、少し待っただけで治まるとは思えなかった。
しかし、震える手でかろうじて握れる力で私の手を掴んだイチの手から、どうしてもという願いが伝わる。
……
「……誰も呼ばないから、座れる?少しでも楽な姿勢になろうよ」
不安だったが、イチの言葉を信じて回復するのを待つ事にした。
そして、イチを椅子に座らせて、流れ落ちる汗を拭いた。
記憶を消した事や、移植をした事によっておこった事なのだろうかと思い、イチを信じて回復するのを待つと決めたのに、数秒でまた不安になる…
……
大丈夫…
目の前の状況から意識をそらし、自分に言い聞かせる。
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