未来

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…… それからしばらくすると、少しだけ呼吸がゆっくりになってきた。 顔は伏せたままだったが、肩の震えは止まり、イチがゆっくりと息を吐いているのを見た。 「…大丈夫?」 イチへ近より、声をかける。 …… 反応はなかったが、さっきまでとは呼吸が全く変わっていて、少し安心が戻る。 首元にまで流れていた汗をもう一度拭こうと、タオルを手に取り、イチの背中の方へと手を伸ばした。 「…あ」 「あ、ご…ごめん。もう、大丈夫だから。少し、出る」 タオルを持った私の手がイチの首元へと到達する前に、イチは急に起き上がり、私の顔と周囲を交互に見回しながら、何か思い出したように立ち上がってドアへと歩いていこうとした。 すぐに立ち上がって大丈夫なのかと心配になったが、足取りはしっかりしていたし、あっという間の事で、イチを止める事ができなかった。 そして、イチは急ぐようにドアを開けて、部屋を出ていった。
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