未来

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「痛っ!」 大きな揺れに耐えられなくなった棚の中にあった物が、一斉に床や壁、天井へと叩きつけられる。 ガラスの割れる音、何かの粉や液体が宙を舞い、化学反応を起こしたのか、煙とツンとした臭いが鼻を刺す。 幸い棚から飛び出した物は私の体へ当たらなかったが、割れたガラス片がいくつも飛んで、私の皮膚へとぶつかる。 とにかく体を守らないとと思い、繋がれた腕を引っ張ってみるが、びくともしなかった。 その間もガラス片は私の体へ刺すように降り注ぎ、顔へ刺さったのかベッドのシーツへ幾つか血液が飛び散っていた。 ベッドの上から動くことのできない私は、少しでも身を守る為に体を丸め、枕に顔を押し付けて煙と臭いを体内に入れないようにした。 …… 何が起こっているの? 揺れはひどくはならなかったが、治まる気配もなかった。 このまま死ぬのではないかと、恐怖が襲う。 イチは、無事なのだろうか? 皆は安心していいよって伝えてくれていたが、どの部分を安心すればいいのだろう? イチが助けに来る? そう思ってみたが、『安心』という感覚を感じなかった。 イチの事を考える度、『心配』の方が増えていく。 …… どうしたら…… 『ギギギ!』 !! 大きな音が背後から聞こえたと思って振り返ると、壁に固定されていた薬剤の棚が壁から剥がれ落ちるように倒れかけていて、その棚が私へと向かって倒れようとしていた。 「!」 私の頭をめがけて倒れてくる棚と棚の中の薬品に、もうダメだと思って息を止めて目を思いきり閉じた。 『ガシャン!!』 『ドン!』 耳へと突き刺さる大きな音が、体を硬直させた。
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