未来

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その時だった、 ! …… …… 「あ…」 さっきまでベッドに拘束されていた自分が、何故かイチの背後に立っていた。 「え…あっ!」 何故そうなったのかを疑問に思い始めたが、それよりイチを助ける事が先だと、体が勝手に動いていた。 「イチ!」 私はイチの背中を覆っている棚に手をかけ、思いきり引っ張る。 「イチ!」 しかし、棚はイチの体から離れようとせず、揺れることすらなかった。 『どうしよう?』という考えをし始めようとすると、また体は勝手に動き出し、床に散乱していた配管の固いパイプを手に取り、机や椅子を並べて、倒れた棚に近付けた。 「今助けるから!」 私は棚と机の隙間にパイプを差し込み、パイプの端に自分の全体重をかけて下へと押した。 『ギギーー』 『ドン!』 「イチ!」 棚を押し上げるつもりだったが、予想外に重すぎた棚は、少しだけ横にズレただけだった。 失敗したかもと思ったが、これも予想外で、棚がズレた事によりイチの体は手前へ押し出され、意識を失っているイチはスルリと抜け落ち、そのまま床に倒れた。 『カランカラン』 「イチ!」 私は握っていたパイプを放り投げ、床に倒れたイチへと駆け寄った。 「イチ?!」 倒れたイチの脇腹には、棒状になったガラスが刺さっていた。 ベッドに拘束されている時には気が付かなかったが、刺さった場所から足にかけて、かなりの出血があったようで、履いている厚手のパンツや靴が血液を吸いすぎて、服や靴からも血液が流れ出ていた。 「イチ」 意識を失ったままのイチの頬に触れてみる。 暖かさは感じるが、血の気のない青白い顔は、徐々にイチの体温を低下させていた。 「どうしたらいい?どうしたら助けられる?」 意識のないイチへと問いかけるが、全く反応がない。 どうしたら助けられるのかが全くわからない私は、そのままイチの頬に触れる事しかできなかった。 「助けて…」 声に出していたのか、心の中で思っただけなのかはわからないが、絶望の中、それだけを願った。
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