未来

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…… 『ありがとう、花菜。目覚めたら……』 …… …… イチの傷口の縫合が終わり、緊張と恐れが解けた瞬間、話しかけていた声が聞こえなくなり、自分の意識も今までの自分へと戻ってきた。 「…イチ」 しばらく待っていれば意識は戻ると言っていたが、イチの顔は青白いままで、指先は凍ったように冷たかった。 周りを見渡すと、踏んでしまった床についた血液が乾き始め、止血の為に使ったガーゼの血液は、鮮血の色から茶色に向かって変化していた。 イチの服も血で染まっていない所が見当たらないほど染まっていた。 まだ目覚める気配がないイチから離れるのは心配だったが、血で重たくなった服を着たままでは動きにくいと思い、イチから離れて着替えを探すことにした。
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