カウントダウンで会いたくて

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 高校に入学して、すぐにバイトを始めたこのファミレスに、新しく大学生のバイトさんが入った。人手不足で忙しい毎日だったので、みんな大歓迎だったのだけれど、これがなかなかに天然系の男子で、パートさんの間でも話題になっていた。  その問題の大学生バイトさんが、「亀ちゃん」こと「亀和田大智(かめわだだいち)」さんだった。ひょろりとした高身長の、真面目で大人しそうな青年だったけれど 「声が小さすぎてオーダーが通らない」 「呼んでも返事が聞こえない」 「皿割り過ぎ」 「とにかく覇気がない」  耳にする評判はいいとこ無しで、「かえって仕事が増えて忙しくなった」なんて事まで陰で言われてしまっていた。 「岩崎君に頼んでいたんだけど、相性がよくないみたいでね」  岩さんこと岩崎さんは、自称舞台俳優のフリーターで、明るくて仕事もできるバイト・リーダーさんなのだけど、亀和田さんには随分と手こずっている様子だった。 「亀! 料理上がったの気付いたら運んで!」 「ぼーっとしてないで皿下げに行くぞ、亀!」 「亀ぇー!!」  陽気な岩さんらしからぬイラついた声を、幾度となく耳にしたっけ。 「亀和田君に対して、嫉妬っぽい感情があるのかもねぇ。あ、知ってた? 亀和田君って、T工大生なのよ。凄いわよねぇ」  『店長は、顔と学歴だけでアイツを採用した』だなんて、岩さんがボヤいていた事を、天野さんはきっと知らない。     
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